2026年2月22日、当会主催によるシンポジウム「ともに生きる 〜こどもたちの未来にどう向き合うか〜」を日本福祉大学 名古屋キャンパスにて開催しました。
連休の中日にもかかわらず、会場には多くの参加者が集い、またオンデマンド配信にも多数のお申し込みをいただくなど、子どもを取り巻く課題への関心の高さがうかがえる一日となりました。
冒頭、亀井共同代表より、当会が掲げる「多様性を大切にし、地域で共に生きる社会」の実現に向けた対話の場として本シンポジウムを位置づけている旨を説明し、来場者の皆様と本会の理念を共有することができました。

第一部 講演
当会の世話人2名が講師を担い、それぞれの実践や想いについて講演を行いました。
1、大髙講師
長年にわたり児童精神科医として地域・学校・医療・福祉を横断した支援に携わってきた立場から、発達障害をめぐる現在の捉え方について、具体的な事例を交えながら講演されました。

講師:当会世話人 大髙一則氏 (児童精神科医)
講演ではまず、「発達障害が増えている」と言われる背景には、診断概念の広がりや社会環境の変化があることが示されました。発達特性は誰もが持つ“でこぼこ”であり、それ自体が問題なのではなく、環境とのミスマッチによって「生きづらさ」として表面化することが丁寧に語られました。
また、医療機関を受診している子どもは、まだ支援につながれている存在であり、本当に困難を抱えている子どもほど、医療や福祉の場にたどり着けていない現実にも触れられました。だからこそ、地域や学校の中に入り込み、子どもたちの日常や生活そのものを支えていく視点が重要であると強調されました。 ADHDや自閉スペクトラム症といった発達特性についても、専門用語に偏ることなく、参加者が体感できる簡単な実験や身近な例を交えながら解説され、「多様性とは何か」を実感をもって理解できる時間となりました。
後半では、小学校中学年頃に訪れる「10歳の壁」に焦点が当てられ、他者との比較や周囲の期待によって自己評価を下げ、不登校や心身の不調につながるケースが少なくないことが紹介されました。特に近年は、周囲に合わせ続ける“カモフラージュ”によって、見えにくい孤立や疲弊を抱える子どもや若者が増えている現状も共有されました。
支援に必要なのは「正しい答え」ではなく、安心して話せる関係性であり、日常の雑談や親でも友人でもない「斜めの関係」の大人の存在が、子どもたちの大きな支えになると語りました。
「自立とは、一人で頑張ることではなく、上手に人に頼ること」
この言葉は、子どもだけでなく、会場に集った大人一人ひとりの心にも静かに響くメッセージとなりました。
2、笹山講師
長年教育現場に立ちながら、地域に根ざした学びの場づくりを実践してきた笹山氏より、「自主夜間中学」をテーマとした講演が行われました。
講演は「自主夜間中学をご存じですか?」という問いかけから始まり、会場の約3分の1がその存在を知っているという現状が共有されました。自主夜間中学とは、戦後に生まれた公立夜間中学の歴史を背景に、市民やボランティアが主体となって立ち上げた、学びを求めるすべての人に開かれた学習の場です。
夜間中学は、戦後の混乱期に働きながら学ぶ子どもたちのために誕生しましたが、高度経済成長期以降の政策転換により各地で廃止され、一度失われた学びの場は容易に取り戻せない現実が語られました。コロナ禍では、特に来日間もない外国人家庭あの子どもたちが学校や日本語教育につながれず、孤立していった状況が浮き彫りになりました。こうした課題を人権の問題と捉え、日本語指導を入口に立ち上げられたのが地域学習支援教室「一歩教室」です。
講演では「言葉の壁は、命の壁」という学習者の言葉とともに、読み書きができないことで支援制度にたどり着けず、孤立に至った事例などが紹介され、学びが生きるための基盤であることが強く示されました。
「カリキュラムのない教室」が生む、多様な学び
一歩教室には決まったカリキュラムはなく、学びたい人が、学びたい時に、学びたいことを学びます。高齢者、義務教育未修了者、外国にルーツを持つ親子、不登校経験者など、多様な人々が集い、学習者がやがて支援者となり、英会話教室や防災活動など地域に還元される循環も生まれています。
最後に、「学びとは点数や資格ではなく、『私が私でいていい』と感じられる居場所を持つこと」であり、多様な人が交わる場こそが真の自立を育む――そのメッセージとともに講演は締めくくられました。

講師:当会世話人 笹山悦子 氏 (高校教諭)
第二部 ディスカッション
地域共生ネットワーク東海 安藤共同代表座長の元、LiveQを用い、会場から寄せられた質問や感想に対して、講師が一つひとつ丁寧に応答し、穏やかな対話が重ねられました。限られた時間ではありましたが、講演内容をさらに深めるひとときとなり、終了後には「もう少し聞いていたかった」「続きのお話もぜひ伺いたい」といった声も聞かれるなど、余韻の残る時間となりました。


また、最後にNPO法人地域共生を支える医療・介護・市民全国ネットワークによる第5回「全国の集い」佐倉大会・大会長 三嶋泰之様もご来場いただき、佐倉大会をご案内されました。

佐倉大会・大会長 三嶋泰之様と共同代表

たくさんのご来場をいただき、誠にありがとうございました。
皆さまとともに考え、共有できた時間は、私たちにとっても大きな学びとなりました。
これからも、地域で生きる一人ひとりの声に耳を傾けながら、つながりを育む場をつくっていきたいと考えています。
次回のイベントでも、また皆さまとお会いできることを心より楽しみにしております。

